街のリリック、SNSの裏側、ヒップホップの歌詞。そこには「ブリる」「ブリってる」「ブリブリ」という言葉がチラリと顔を出すことがあります。ひとことで言えば、これらは 大麻で「ハイになっている」状態を表すスラング のひとつです。(cbd-japan.com)
ただし、この言葉を鵜呑みにして意味を固定するのは危険。スラングは使われる文脈・コミュニティによってニュアンスが揺れるからです。この記事では、「ブリる」の意味、語源・派生、使われ方、そして注意すべきポイントを感覚を交えて紐解いていきます。
意味と用法:ただ「まったり」じゃない、その深み
「ブリってる/ブリブリ」の基本意味
一般的には、大麻を吸って酩酊・陶酔状態になっていることを「ブリってる」「ブリブリ」と表現することが多いです。(cbd-japan.com)
刑事弁護の用語集では、「マリファナ成分が身体に入っている状態」を指す隠語として紹介されています。(keiben-oasis.com)
実態的には、「感覚が緩やかに、ぼやけて、拡張するような感触を味わっている状態」に近いことが多く、スラング使用者の間では「いい具合に効いてる」「ハイ具合がちょうどいい」ことを前提に使われることが多いようです。(kabunolog.hatenablog.com)
ただし、「ブリる=ただぼんやりしている」だけではありません。むしろ、「まったり」感覚をベースにしながら、感覚の鋭敏化・世界の透け感・身体と感情の境界の揺らぎを含んだ表現がしばしば暗黙裡に含まれているのです。
「まったり」以上の質感:感覚の揺らぎを表すスラング
たとえば、下記のようなニュアンス:
聴覚・視覚・触覚が研ぎ澄まされる:普段では気づかない音の起伏、風の揺らぎ、空気の温度変化などが「立体的になる」感覚
時間の感覚の伸縮:時間がゆるくなる、遅くなる、あるいは反転するように感じる瞬間
身体と感情の一体化:体の中で起きる小さな変化(呼吸、脈動、皮膚感覚など)が拡張して感じられるようになる
内省・想起・記憶の揺らぎ:昔の記憶が風景のようにフラッシュバックしたり、感情が拡張して過去と今が潤滑に結びつくような錯覚
こうした “質感” を言語化するため、「ブリる」は単なる「気持ちいい」ではなく、「感覚の変奏」を含意する言葉でもあるわけです。
語源・広がり:どこから来て、どう使われ始めたか
語源仮説:なぜ「ブリ」?
正確な語源は確認できていませんが、いくつかの仮説が考えられます。
擬音・語感由来説
「ブリッ」「ブリブリ」といった音の響きが、「体が重く揺らぐ」「感覚がブレる」ような感覚を連想させ、そこから「ブリる」が派生した可能性。スラング語で意味を持たせやすい音象徴的生成のパターンです。
レゲエ/ヒップホップ語 “bling‑bling” から転化
CBDメディア「CBD JAPAN」などでは、「ブリブリ」という語はレゲエ・ヒップホップで使われる “bling‑bling” に由来する可能性があるとする記述もあります。(cbd-japan.com)
ただし、これはあくまで仮説であり確定的な説ではありません。
既存語との重なり・転用
「ぶりっ子」「ぶる(振る)」など、日常語や若者言葉にも近しい語根があるため、それらの語感の転用・遊びから発生した可能性も。
広まり方:ネット・カルチャーのフィルター
主にネット掲示板、SNS、ラップ/ストーナー系音楽のリリック、CBD・カンナビノイド関連メディアなどで散見される表現。
スラングゆえに使い手・文脈毎に意味が揺らぎ、時には誤用(単なる「酔っぱらい」メタファーなど)されることも。
ブリ体験を彩る使い方例:言語と体験の重なり
スラング表現として「ブリる」は、しばしば次のような文脈で用いられます。
音楽との結びつき
「ブリった時に音楽を聴くとディープに入れる」「音の粒が見える」など。これは感覚の拡張感と同調性を強める経験を指す言い回し。
感覚散歩・風景表現
「夜の街を歩きながらブリる」「景色が映画になる」など、視覚・環境に焦点を当てた体験語。
空腹・味覚との融合(マンチ/マンチーズ系)
大麻効果で味覚が鋭敏になる現象(マンチ)が併用され、「ブリ状態+食欲の昂り」を語る表現が使われることも。
注意喚起との併記
スラング使用者同士では、「ブリ過ぎてバッド」や「ブリ控えめがいい」というような安全ラインを意識した文脈も散見されます。
注意すべきポイント:言葉の裏にあるリスク
スラングを知ることはカルチャー理解につながりますが、以下の点には必ず注意を払うべきです。
法的・社会的リスク
日本では、大麻(THC含有物質)の所持・使用・栽培は原則として違法です。スラングであっても、実際の行為が法律に触れる可能性があります。
メディアや広告で「ブリる」表現を使う際には、誤解・助長につながる表現を慎重に扱う必要があります。
誤解・過剰表現の危険
「CBDでブリブリになるか?」という問いがネットに出回ることがありますが、CBDには通常「高揚」や「ハイ」になる作用は認められておらず、「ブリぶり」状態とは区別されるべきものです。
スラングとしての「ブリる」はあくまで主観的な体験表現であって、すべての人に同じ感覚が再現されるわけではありません。
健康・安全への配慮
“ハイ” 状態中に無理な運動、長時間のサウナ・水風呂、運転等を行うことはリスクを伴う可能性が高い。
心身の状態(体調、既往症、他薬剤服用の有無など)によって反応が変わるため、自己管理・慎重な判断が不可欠。
感覚の遊びとしての「アクティブ・ブリ」の誘い
冒頭で掲げたように、「ブリる」はチルなソファ時間だけのものではありません。逆に、体を動かし、感覚を呼び覚ますアクティブな体験の入り口としてこそ、その魅力が輝く瞬間もあります。
森や湖、夜道など風景が五感を揺さぶる場所
音楽・ライブ・フェスと、音の波に身体を預ける瞬間
サウナ―水風呂―外気浴といった温冷交互の流れ
ドライブ・サイクリングで流れる風景に身を委ねる体験
これらは、「外界」と「内界」が交錯し、言語を超えた体験の領域に触れる瞬間。ブリ状態こそ、それを可能にするレンズになりうるわけです。